序言

 科学を含め、文化は、人間活動のほんの一部に過ぎません。それが人間を他の動物と区別する最大の特徴であることから、教育では大きく取り上げられるのですが、人間活動の他の部分、大きな部分、大脳皮質の基底に起因する部分の存在をもっと重要視する必要があるのではないでしょうか。

そうは言っても、人間の文化を担う活動の重要性を軽視し過ぎることは危険です。文化が人間活動を支えて、他の動物に優越し、地球環境を左右するまでの現代文明を築き上げてきたのですから。パスカルが「人間は自然の中で最も弱い葦にしかすぎない。しかし、人間は考える葦である。」(パンセ347)と言うとき、人間を文化の担い手として捉えているのですが、その全体像が決して弱い存在ではないことを、われわれは自覚しなければなりません。

人間が種として存在するためには、人類を包み込む地球環境が必要なことを考えると、放漫な動物性をコントロールする文化の存在が不可欠なのですから、そのような文化の可能性を探求するためにも、科学することを身につけることが必要です。ここに集めたささやかな論集が、そのために少しでも役に立つことを願って止みません。(20086.3

 

科学に関するエッセイ

1. 赤祖父俊一、「パラダイム・創造性・科学革命」

(「自然」19833月号、pp. 38-45)

 

2.パイエルス、「量子力学の最初の数年間」

(「クヴァント」1988 No. 10, pp. 2 9

 

3. 朝永振一郎、「物理学とは何だろうか」

(著作集7.「物理学とは何だろうか」より)

 

4.     伏見康治、「室温核融合の怪、ラジュウム温泉はやはり効くのか、寺田物理学の周辺」

(「アラジンの灯は消えたか?」より)

 

5.        沢田哲雄、「Cold Fusion へのメッセージ」

CFRLニュース No. 12 & 13 より)

 

6.板倉聖宣、ロバート・フック賛

(ロバート・フック「ミクログラフィア―微小世界図説」への「はしがき」と「あとがき」)

 

7. ロバート・フック、科学することの自覚

(ロバート・フック、「ミクログラフィア―微小世界図説」の「献辞」と「序論」から)

 

8.広重 徹、科学史を見る眼

(広重 徹、「物理学史 I」の「はしがき」より)

 

9.小島英夫、地震予知はできるか?