日本の読者、友人の皆さんへ、

 5月のポートランドから、CFRL News No. 35を添付資料としてお送りします。

 5月に入り、北緯45度のこの地でも、平均気温は大分上がりましたが、さすがに雨もよいの日には肌寒く感じます。静岡の5月との違いでしょうか。

 自生の植物では、公園の植え込みにスズラン、エンレイソウなどが咲いていて、北海道と同緯度の雰囲気を味わせてくれます。そういえば、空港への市電の、町を出外れた沿線にハマナスの群落があって、もう花が咲き始めていました。

 昨年も眼を瞠はった石楠花は、今年も多彩な原色の大輪の花房を開いて、今を盛りと咲き誇っています。樹高が2メートル以上あるので、見ごたえがします。館林(群馬県)の城址公園のツツジの素晴らしさをご存知の方ならば、丈の高い、2メートル以上の大株の花樹の見事さを想像していただけるはずです。理学部ビルの前の道端の花壇も、Common Camas(辞書では不明), Red Columbine(紅苧環), Douglas Iris(ダグラスあやめ)など、昨年も眼を楽しませてくれた花々が咲き出しました。適者生存でしょうか、Common Camasの株が大幅に増えたようですが、Red paintbrushはほとんど消えかかったようで、見かけません。Lupine(ハウチワマメと辞書にある豆科の紫の花)はまだ咲き始めません。Evergreen Huckleberryと名札のついたコケモモの類の小潅木も小花をぽちぽち開き始めたところです。Lily of the Valleyはマイズルソウに似た白い房状の小花を咲かせていますが、スズランとはまったく別種です。普通の語学辞書ではこの辺になると区別できません。

 5月から、土曜日のFarmer’s Marketがアパートの前のPark Avenueを舞台に店を開きました。新鮮な季節の野菜・果物がスーパーとほとんど同価格で手に入るのは、本当に有難いことです。半年ぶりなので懐かしく、親近感を覚えます。去年と同じところに同じ農園が店を開いているのを見て心温まる気がするのは、Portland人になってきたことなのかもしれません。

 7階の窓から見通せた人工芝の球技場も、木の葉が繁ってほとんど見えなくなりました。この球技場では、あまり強くないPSUのアメリカンフットボールチームVikingsの練習も行われていますが、週に二回のサッカーの授業も晴天の時にはここで行われます。1学期(1 term10週)週二回、一回1時間で1単位の体育実技Physical Educationの授業です。Bulletin(Schedule of Classes)によると、この授業は一般教養に相当する科目で、単位取得には41ドル払う必要があるようです。受講単位に応じて授業料を払うのは合理的です。講師が物理学科出身のNikos氏(ギリシャ出身)で、4年ゼミの指導教官だった教授に紹介されて冬学期には数回参加しました。正規の受講生の他に、任意に参加する学生も多いようで、毎回30人位の学生が集まって、ハーフコートのミニゲームを二試合パラレルにやっていました。アメリカの女子サッカーがオリンピックの強豪で優勝経験もあり、前回も優勝候補の筆頭であったことはご存知の方も多いでしょう。そのためか、3割くらいは女性でした。それでロートルの僕でもなんとか参加できたわけですが、体力の限界を思い知らされたことは確かです。(ロートル【老頭児】中国語だったのですね!)

専門科目以外に取らなくてはいけない教養科目の一部に属する体育実技には、他に次のような種目が並んでいます。Cadio Matrix, Fly Fishing, Aqua Aerobics, Aqua Games, Basketball, Bowling, Cardio Kickbx, Circuit Train, Argentin Tango, Ballroom Dance, Bg Belly Dance, Flamenco Dance, Latin Dance, Capoeria, Swing Dance, Mexican Fold Dance, Hip Hop Dance, Day Hiking, Fencing, Flex Fitness, Golf, Beg/Int Racquetball, Step-Floor, Body Sculpt, Step/Sculpt, Adv Step Arbc, Beg/Int Swim, Lap Swimming, Beg Taekwondo, Taichi Saver, Tajiquan, Tennis, Adv Tennis, Ultmt Frisbee, Varsity Sprts, Volleyball, Weight Train, Yoga-Fitness, Yoga, Relaxtn Yoga, Pilates, Hapkido, Aikido, Taiji Sword, Scuba Lecture, Scuba Lab

略称もあって内容の推測できないものもありますが、合気道まであるのにはびっくりです。(BgBig=BiginnerInt=IntermediateAdv=Advanced, Kickbx=Kick Boxing, Arbc=Aerobics 位は判読できます。)

グランドへの視野を遮る樹木の緑ですが、小鳥の鳴き声を聞かせて、朝夕の安らぎを与えてくれるのは、ちょっと贅沢な環境です。7階の窓よりまだ高い大木の梢でしきりに鳴いている小鳥の名前を知りたいと、いろいろ努力しましたが、今のところ不明としか言いようがありません。日本から持ってきた広辞苑のCD-ROM版に「小鳥の鳴き声」があり、それと聞き比べて近縁種を絞ってみたところ、メジロ、ノジコ、キクイタダキあたりの鳴き声に近いようです。メジロは日本ではありふれた飼育鳥ですが、囀りを聞いたのはこのCDが初めてで、美しい鳴声におどろきました。他に、日本にはいない、胸の赤いロビンRobinが特徴のある鳴声「キョロキョロキョロピピピピ」と鳴いていましたが、最近は聞こえなくなったので、縄張り宣言期から子育て期に入ったのかもしれません。

最近の日本の新聞では、メジロ飼育の規制を厳しくしようと、隠れ蓑にされてきた中国産には証明書を要求して、密猟を取り締まることにしたようです。静岡の拙宅周辺でも、密猟が目に余っていましたので、当然の処置でしょう。

ロビンの鳴声を上に書き表しましたが、ホトトギスが関西と関東で違った鳴き方をすることはご存知でしょう。子供の頃、ホトトギスは「テッペン欠けたか」と鳴くと言われて、変な鳥だと思ったものです。「鳴いて血を吐くホトトギス」とか、「ホトトギス 鳴き行く方を眺むれば ただ有明の月ぞ残れる」(不確かですが)という古歌などで、名前をよく聞く鳥を知らないというのは、少年期に体験した欲求不満に似た奇妙な精神状態です。群馬県の平野部で育ったために、鳴声を聞いたことがなかったという、原因不明の飢餓状態のような欠落感でした。

静岡へ赴任して、日本野鳥の会の静岡支部に入会し、何回か探鳥会にも参加するうちに、ホトトギスが「特許許可局」と鳴くことを知りました。「テッペン欠けたか」と鳴くのは関西のホトトギスだということも知ったわけです。関西弁で言ってみると、関東弁の「特許許可局」と同じイントネーションになることが分かります。小鳥の鳴声を何と聴きなす(倣す)かは、人間の方の意識が反映して面白いものです。「焼酎一杯ぐい」(センダイムシクイ)「銭取り銭取り」(メボソムシクイ)「一筆啓上仕り候」(ホウジロ)「土食うて虫食うて口渋い」(ツバメ)「仏法僧」(コノハズク)などは、凝った聞きなし(倣し)の最たるものでしょう。

軽井沢の星野温泉での探鳥会で、東京からの探鳥会に同行された中西梧堂氏に偶然会ったのも、懐かしい思い出です。静岡支部の支部長を長く務められたDrトリキチこと、歯科医師の(故)小原さんのことも思い出されます。小原さんは能の金春流の師範で同流の静大の(故)渋谷教授(半導体物理学の大家)と繋がりがあり、僕と同じ講座だった渋谷さんに紹介されたのが小原さんとの出会いでした。少しは野鳥の知識を持てたのもそのお陰です。呉服町のビルの2階にあった小原医院では、生物学科の(故)上野教授(花粉学の大家)ともよく出会ったものです。上野さんも歯が悪かったのですかね。もっとも歳をとると先ず歯に来ると言いますから、歯並びの悪い小生と年寄り(失礼)が出会うのは当然だったのでしょう。

 

CFRLニュースも35号を迎え、約3年間ほぼ月刊で発行してきました。勝手に送らせて頂いて、ご迷惑だった向きもおありかもしれません。この間、常温核融合の研究も順調に進展し、私見によれば、最近の諸論文(下記文献)で一先ずは説明の大枠ができ、本質的には解決しました。あとは、細かい計算をじっくりやらなくてはいけない段階になりましたので、Newsを定期発行から随時発行に切り替えたいと思います。次号からは必ずしも月に一回の発行ではありませんので、ご了承ください。

また、この「前書き」は「ポートランド通信」に切り替えて、CFRL Newsとは別に、これまでに交信のあった方と受信希望の方を中心に送信させて頂きます。ご希望をお知らせください。

文献

H. Kozima, J. Warner and G. Goddard, "Cold Fusion Phenomenon and Atomic Processes in Transition-Metal Hydrides and Deuterides" J. New Energy 6-2, 126 (2002).

HKozima”Exited states of Nucleons in a Nucleus and Cold Fusion Phenomenon in Transition-metal Hydrides and Deuterides” Proc. ICCF9 (to be published)

H. Kozima, "Anomalous Nuclear Reactions and Atomic Processes in Transition-Metal Hydrides and Deuterides" J. New Energy 6-3 (2002). (to be published)