日本の読者、友人の皆さんへ、

8月のCity of Roses, Portland からCFRL News No. 27を添付資料としてお送りします。

今年のPortlandは寒いくらいの陽気で、記憶にある宮沢賢治の絶唱「サムサノナツハオロオロアルキ---」の冷夏とはこんな夏なのかと、関東育ちで東海暮らしの長い筆者に感慨を与えています。6月中旬に一度30℃を越す日があって、夏になったらけっこう暑いんだ、と思わせたものですが、最近はこのまま秋になってしまうのかなあ、などという不安が胸をよぎったりしています。冬に降水量が少なかった影響で、河川の水量が少なく、農業用水を確保したい農民と絶滅危惧種の魚類を保護したい河川管理局との間に水争いが起こっているのも、傍目には珍しい見物です。警官の否定的監視を横目に、ダムの水門を強行開放する農民の集団が何度かテレビに映し出されましたが、この夏の多雨のお陰で事態は沈静化に向かっているようです。

720日に新設路線の市電Streetcarが走り始めました。最初の3日は祝賀走行で、約5キロほどの全路線が乗り降り自由でした。そのために、野次馬客(?)で溢れかえり、バスを路線に沿って臨時運転して振替輸送(?)していました。前からの路線MAXMetropolitan Area Express)は、南と北の郊外の二市ヒルスボロHillsboroとグレシャムGreshamを結ぶ`全長約50kmの郊外電車ですが、Portland市内では市電の役割をしています。こちらは日本流に言って2輛連結位の長さがある電車ですが、こんどのStreetcarは日本の各都市に残る市電なみの大きさで、バスの便の良くなかった市の南北を結んでいます。9月からは、MAXの空港線が開通する予定で、今でもバスの便の良いPortlandPDX)空港は一層便利になります。料金が最高でもたったの1.5ドルで1時間(土日、休日は2時間)は乗り降り自由、市内の無料区間Fareless Squareはいつでも無料、というのも、信じがたい現実です。今年の4月からDelta航空の日本直行便が中止になり、日本との往復はちょっと不便になってしまいましたが、残念なことです。

日本では参議院議員選挙が29日にあって、一つの方向がかなりハッキリと出てきたようですが、昨秋のアメリカの大統領選挙の余震はまだ続いています。いろんな新聞社がいろんな調査をしていて、やはりBushの得票が多かったとか(「フロリダ新聞」の得票再計算)、海外居住者の郵送投票の取り扱いで、規則上は無効なものを有効にした不正があったとか(「NYタイムズ」の調査)、論議を呼んでいます。それで、フロリダ州の選管委員長兼共和党の州選挙事務長だったハリス女史が調査結果に反論したりしていました。議会の委員会も、大統領選挙の方式を全国で統一する方向で、各州が検討するように勧告する報告書を出したようです。

最近のBush政権の外交内政には、国内でもかなりの批判が出ています。727日の「オレゴン新聞」The Oregonianは、アメリカ外交がヨーロッパ諸国との間に溝を深めていることを一面の2/3を使って報じ、ABM協定、ミサイル防衛、携帯火気輸出、生物兵器禁止条約、地球温暖化防止条約での政府の方針が、アメリカの孤立化を招きかねないと心配しています。日本の最近の内政が、アジア諸国からの孤立化を予想させるのと、何か、どこかで関連があるのでしょうか。そう言えば、1920年代に、ウィルソン大統領の提唱した国際連盟をボイコットしてモンロー主義を標榜したアメリカと、「対支21か条要求」を出して中国侵略の方向性を打ち出した日本とを思い出します。その後の世界史が辿った軌跡は、人類史上最大の悲劇をもたらしたわけですが、今は状況が全く違いますから同じ軌跡は辿らないでしょう。しかし、広い視野を失った偏狭な国粋主義的国民感情の醸成は、違っているが似たような不幸をもたらしかねないでしょう。

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Hideo Kozima

Cold Fusion Research Laboratory, Physics Department, Portland State University,

E-mail address; cf-lab.kozima@pdx.edu

CFRLWeb-site(Japanese); www.mars.dti.ne.jp/~kunihito/cf-lab/index.html
CFRLWeb-site (English and Japanese); http://web.pdx.edu/~pdx00210