日本の読者、友人の皆さんへ、

 CFRL News No. 23を添付資料としてお送りします。

 三月のNewsの「前書き」はこちらの地震のことで、季節の便りも書けませんでしたが、今度は静岡で地震がありました。「地震予知は研究段階の問題である」とはっきり認識しているアメリカと、あたかも実用段階に達したかのように振舞う学者のいる日本との格差については、前号で触れました。とにかく地球の地殻活動が活発化しているようですが、こちらにいることを幸いに、目を瞑ることにします。

三月の始めには、Willamette河岸の「日本公園」の桜並木が満開になり、町中のあちこちに植えられた桜の木もきれいに咲きました。今は八重桜が咲き始めています。日本の樹木が多いことは前に触れたと思いますが、マンサク、辛夷、椿、馬酔木、皐月などが、あちこちに植えられています。戦前は日本人町と呼べるくらいに日本人が集まって住んでいたというOld Townも、戦時中の強制収容で壊滅し、今はChina Town的な様相を示しています。「日本公園」には、1988年の強制収容に対してのレーガン大統領の遺憾の意と議会の謝罪文とが彫られた石碑も建っています。

今住んでいるアパートの横のPark Avenueは、Salmon Streetから南で幅80メートル、長さ2キロの、両側に一車線の車道のある公園です.その南端は大学の中までつづいていて、大学の建物はその両側に建っています.公園には高さ1020メートルの、ふた抱えもある落葉樹の大木が4列に立ち並んでいるのですが、それぞれ芽吹いて全体が黄色っぽくなってきました。43日から春学期が始まり、学生も戻ってきて、キャンパスがまた賑やかになりました。

春学期は6月までで、その後に短期集中の夏学期が2ヶ月間開かれます。秋、冬、春、夏の各学期にフルに単位を取ると、3年で大学を卒業することは容易です。1月に修士を終わり博士に進んだGreg21歳になったばかりでした。この州では21歳にならないとアルコール飲料が飲めない法律だそうで、彼は几帳面にそれを守っていました。一方で違法行為、他方で法律遵守とスペクトルの幅の広いのもアメリカの特徴でしょう。

町のあちこちで見かける、高さ2メートル位にも達する石楠花の茂みも、紅花の早生種が3月から咲き出し、4月に入って白にピンクの混じった準早生種が咲き始めました。まだ蕾の小さい株がたくさん目に付きますから、これから5月まで楽しめるのでしょう。日本では北海道で咲くエンレイソウも道端の花壇に咲いています。

ブッシュ政権が誕生して3月経ち、その政策がはっきりしてきました。12月までの得票決定騒動であいまいになってしまいましたが、景気に翳りが見え始めた時期での新政策の柱が、「減税」だった訳です。大幅減税は当然誰が得して、誰が損するのか、を問うことになるのですが、明らかに割を食うのは低所得層です。減税論議が現在さかんに行われていて、老人福祉、教育予算へのしわ寄せにたいする反対と減税でアメリカ経済の立て直しができるのか、という疑問が出ています。

 もう一つの、選挙戦当時からの問題が、「自然保護政策」でした。三月末に出てきた、地球温暖化対策の京都会議(拙著Discovery,Sec.14.2でも記した1997年の国際会議)の気候条約から脱退しようという方針には、世界中で批判が巻き起こったこと、周知のことです。選挙戦でネーダー候補がゴア批判を繰り返したのは、ブッシュ政権を側面援助して反環境保護政策を引き出し、保護運動を盛り上げようという深謀遠慮だったようです。政治の世界の奥深さはCFの比ではありません。