日本の読者、友人のみなさんへ。

 初冬のポートランドからNews No. 19を添付資料としてお送りします。

前号の「前書き」で触れた大統領選2000は、計らずもアメリカ民主主義が危うい状況にあることを露呈したようです。テレビでは南部のKKKの活動などを紹介もしていて、人種の坩堝のようなこの国の暗部を見せています。戦後でもマッカーシズムや大統領、司法長官、人権活動家などの暗殺があった国ですから、見えないところでは相当な暗流があるのでしょう。

ご存知のように、アメリカの州の独立性が高いことは、日本の戦国時代の領国を考えると多少理解できるようです。アーカンソー州でしたか、公民権法の実施を強要するために連邦政府が連邦軍を送り込まなければならなかったことがありました。日本の県知事の何割かが自治官僚の天下りで占められていることとは、まったく対照的です。したがって、大統領選挙でも、州ごとに投票方式が違っています。最も進んでいるところでは、銀行や郵便局の現金自動受け払い機のように、モニタ画面に候補者名が出ていて、ポインタを当ててクリックする方式が採られていたようです。この場合、選択した候補者の数が間違っていれば、投票をやり直すように指示されるのです。日本のように手書きの所ももちろんありました。いずれにしても、書き直しが可能になっていたようです。

今度の大統領選では、知事が一人の候補者の弟で、選挙管理委員長がその候補者の州選挙参謀だったフロリダ州の選挙で、いろいろな不祥事が出てきました。候補者と穴の位置との対応が不明瞭なbutterfly ballot、殆ど40年前の1962年に考案されて余所ではもう使われていない穴あけ式の投票機、さらに大統領選挙の部分の穴が開き難かったとか、何やら胡散臭い話が出ています。問題のPalm Beach Countyでは、二人の候補者に穴を開けたために無効になった票が19,000あったり、他所では考えられない高得票をBuchanan候補が得たりしました。彼自身、この結果は投票ミスのためだろうと、インタビューに答えていたくらいです。

ここのButterfly ballotでは、左頁にBush, Gore, ---、右頁にBuchanan----と並んでおり、穴は真中に一列に左右の頁の候補者の合計数だけあります。Bushを選ぶには第一の穴、Buchananを選ぶには第二の穴、Goreを選ぶには第三の穴、などなど、だということは、日本でも解説されているのではないでしょうか。 Buchananの高得票や二重パンチによる無効票の多さの原因が納得できます。間違って穴を開けたときには、投票用紙を交換できることになっていたようですが、二重パンチを機械的に受け付けないようにするくらいのことも、していなかったようです。

この州では、アフリカン・アメリカンやヒスパニック・アメリカンの投票が妨害された多くの例も報道されています。もちろん、彼らは民主党支持が圧倒的なのだそうです。

 まだ決着のついていない(127日現在)、アメリカ史上初めてのdark electionがどうなるかも興味がありますが、アメリカ社会の一面が浮き彫りにされたことと捉えて、後のお楽しみと考えたいと思います。

 この前書きでは、大学図書館の使いやすさを実感しましたので、そのことを書こうと思っていたのですが、あまり長くなりますので、次回に譲ります。