日本の読者、友人のみなさんへ。

CFRL News No. 18を添付資料としてお送りします。

 ポートランドはもう晩秋で、夜などは外套と襟巻きが必要なほどの寒さです。

 こちらへ来てから2ヶ月が過ぎ、ようやくアメリカの生活にも慣れてきました。

一番困るのが、電話での応対です。US Onlineというケーブルテレビの会社と電話契約をさせられてしまい(こちらの不注意もありますが)、それを電話会社のUS Westに変更するのに、大変な苦労をしました。もう一つは、H.P. Omni BookというCDドライブのないノートパソコンを通信販売で買って(300ドル)modemをインストールしようとしたところ、通信販売で買ったPC Cardが不良品で、この返品に関する電話での応対です。これは遂に手におえず、学生に代わってもらいました。

電話で英語を使って喧嘩が出来るようになるには何年かかることか、気が遠くなるような絶望感に襲われます。これは戦後の混乱期に英語教育を受けた世代だけの悩みでしょうか。

PSU (Portland State University) について、少しずつ紹介をしたいと思います。

76年から77年にかけてUniversity of Iowa, Iowa City, Iowaに滞在したときには、時あたかも大統領選挙の年で、1976年には民主党のJ. Carterが当選しました。今年も大統領選挙の年で、G. BushA. Goreが接戦を演じているようです。3人目のR. Naderが絡んで、テレビの選挙用コマーシャル時間をBushに売ったとか報道されて、Naderの演説会場ではNot for Saleというプラカードが掲げられる場面も見られました。2,3日前には、Bushが24年前に飲酒運転で逮捕された事実が発掘され、大々的に報道されました。この報道が今回の、多少Bushに有利と報道されてきた選挙戦にどんな影響を与えるのか、興味があります。

このCFRL News7日の投票日以前にお送りして、結果を予想する楽しみを読者の皆さんに残しておこうと思います。

日本の総選挙と同じように、アメリカではGeneral Electionで、州内の色々な公職の選挙が同時に行われます。日本と最も違うのは、州の法律について、100条位の新規に審議される法案についての一般投票が行われ、それで決定されることでしょう。テレビで「Measure(法案)95に反対しよう」、「Measure5に賛成しよう」などの広告が、「助役には誰さんを」、「会計監査には私を」、などの広告と一緒に放送されています。また、町の中にもポスターが出ていたりします。

今回は、Vanguard という日刊の学生新聞とThe Oregon Scientistsという季刊新聞について、簡単に紹介します。

Portland State University Vanguard 

この新聞は、火曜から金曜まで、学期のあいだ学生によって毎日発行されているもので、無料で配布されています。A3版8ページから12ページの紙面に、大学関係の記事を中心に、Oregon州の記事、合州国の記事などを載せています。University of Iowaでも同じような大学新聞Daily Iowanが発行されていて、日本の大学との質の違いを感じたものです。他の例も合わせ考えると、大学が社会の有機的な一部になっている構造が良くわかります。

最近の11月2日号のトップ記事は、"New technology hits PSU" というもので、

"Retrofitting moves classroom instruction into new millennium"

という副題があり、教室のハイテク装置が更新されることになったことが、報じられています。1面には他に、"Researchers receive $528,000 grant",  "INS cleans up its act in Portland", 2記事が載っています。

The Oregon Scientists 

こちらは、"Quarterly Review of Science, Research, Technology, Engineering, Related Business & Education" と副題があり、この新聞のCounselorsにはPSU, Oregon State University, Oregon Independent College Foundation, Oregon Graduate Institute of Science and Technology, Reed college, University of Portland, University of Oregon, Oregon Health Science Universityなど、州内の高等学術機関の学長、学部長などが名前を連ねています。

版型はVanguardと同じA3で、20ページの新聞です。今年の夏号Summer 2000の一面トップ記事は、

"Unparalleled China Engineering feat progresses".

 "Oregon scientist evaluate Yangtze dam impact. Human well-being hinges on Earth biodiversity".

と副題がついているように、中国の揚子江に作られる三峡ダムの環境への影響を論じたものです。

記事は、Special Report, Research, Technology, Education, Environment, Miscellaneousに分かれており、 それぞれ州内の研究者が筆を執っています。

面白いのは、Recent patent granted to Oregon residentsの欄で、第18面が埋め尽くされており、Chemical 27, Electrical 37件、General and Mechanical 16件が代表例で掲載され、各関連特許が37件とか、2件とか付記されています。各特許のAbstractsThe Oregon Scientist  でコピーを取ってもらえます。(Abstracts of any patent listed are available for $10 per copyor a copy of the complete patent for $20. Address prepaid orders to The Oregon Scientists. PO Box 230220, Tigard, OR97223

いずれにしても、一極集中の日本に較べて、地方分権の傾向の強いアメリカならではの文化と言えるのではないでしょうか。因みに、PSUは戦後にできた総合大学で、Oregon State University1868年生まれの、州内のアカデミックな伝統を担う総合大学です。そのPSUの諸設備が日本のほぼ同様なクラスに属する静岡大学に較べてちょっと格が違うようなのは、アメリカと日本の文化の格差なのでしょう。

今号の「前書き」はこの位にします。

小島英夫