CFRL News No. 51           (2003. 8. 10)

Cold Fusion Research Laboratory (Japan) Dr. Hideo Kozima, Director

                            E-mail address; cf-lab.kozima@pdx.edu

                            Websites; http://web.pdx.edu/~pdx00210

               Newsのバックナンバーは上記ウェブサイトでご覧になれます

 

   常温核融合現象CFP(The Cold Fusion Phenomenon) は、「背景放射線に曝された、高密度の水素同位体(H and/or D)を含む固体中で起こる、核反応とそれに付随した事象」を現す言葉です。

 

  CFRL News No.51をお送りします。この号では、次の記事を掲載しました。

1. 「安定性効果」“Stability Effect” 常温核融合現象における一つの法則.

 

1. 「安定性効果」“Stability Effect” 常温核融合現象における一つの法則.

常温核融合現象(CFP)において、“Stability Effect”(安定性効果)と名づけた一つの法則が存在することを発見しましたので、ICCF10での発表を前に、概略を報告します。

この法則「安定性効果」は、「CFPにおいて核変換によって生成される核種の生成核率は、その安定性に比例する」というものです。この特徴は、前から多くの実験家が経験的に推測していたものですが、以下に示すように統計的に明らかにしたのは、これが初めてではないでしょうか。

常温核融合現象における最初の法則性と言っても過言ではないでしょう。

 

「安定性効果」の説明

このNewsにつけた別添付のPDFファイルの図1と2とをご覧下さい。これは原子番号Zが3−38と38以上の場合に、天体物理学と固体-核物理学という、まったく異なる二つの分野の実験データをZの関数としてプロットしたものです。

天体物理学におけるデータは、宇宙における元素の全元素に占める割合(存在比;核種の安定性に比例すると考えられる)を対数関数(log H)として示しています(Suess and Urey, Rev. Mod. Phys. Vol. 28. pp.53-74 (1956).)。

SSNPのデータは、CF研究の実験で、各元素(原子番号が3以上)の測定を報告した論文の数Nを、約40の論文から数えて示しています(総数プロット)。この図を見ると、明らかにlog H Nとの間に相関があることが分かります.この相関を「安定性効果」Stability Effectと呼ぶことにします。ただし、Z = 7 (N), 8 (O), 10 (Ne), 18 (Ar), 36 (Kr), 40 (Zr) and 47 (Ag)には、大きな差異が生じています。これらの差異の多くは次のように説明できます。

Z = 40 47以外の差異は、それらの元素を測定する技術的問題に原因があることは明らかです。Z = 47 (Ag)における差異は、AgPdからNTD(核崩壊による核変換)で説明でき、この現象は宇宙の元素生成機構には存在しないことで、説明できます(拙著、「常温核融合の発見」大竹出版、東京、1998)。Z = 40 (Zr)における差異だけは、今のところ理解できません。どう考えたらいいのか、ご教示いただけると幸いです。

もし、Nの計算に、単純な測定数を使った図(総数プロット)の代わりに、測定元素の量で加重した測定値を足し合わせた図(総量プロット)を使えば、二つのデータの定量的な一致は確実に改善されるでしょう。宇宙の存在比log Hが対数値であることに改めてご注意ください。

Z = 1 (トリチウム) 2 (へリウム)の測定は、CF研究で非常に多く報告されていますが、この解析からは除外しました。これらのデータは特別の成因によると考えられ、それらは宇宙の元素生成機構には存在しないからです(“Discovery”, Fusion Technol. Vol.33, pp.52-62 (1998), and J. New Energy, Vol.5-1, 68-80 (2000))

 

「安定性効果」の意味

上に説明したように、「安定性効果」は非常によく成り立っています。これは、常温核融合現象(CFP)の核変換をもたらす機構が、固体-核物理学における原子過程に明確な根拠をもっていること、それが宇宙で起る元素生成機構と密接な関係があることを示しているのでしょう。

この法則の説明は、ICCF10で行う予定ですが、帰国の日程の関係で、25,26の二日しか会議に参加できません。主催者が、事情を考慮して説明の機会を与えてくれることを願うばかりです。

常温核融合研究所とICCF10のウェブサイトを下に記します。

     CFRL website: http://web.pdx.edu/~pdx00210/

     ICCF10 website: http://iccf10.org/