CFRL News No.4 (1999. 9.10)

                 常温核融合研究所     小島英夫

 

   CFRL News (Cold Fusion Research Laboratory News) No.4をお届します。

   4号では、

1)     International Journal of Hydrogen EnergyIJHEに投稿した新論文のこと、

2)同誌に掲載予定になったの論文のこと 

3)Fusion Technol. 36, No.3 (1999)に出る論文(News No.2で触れた)の校正が済んだ事、

4) Fusion Technol. に掲載予定になった論文のこと、

5)RCCNT7の手続きが、遅れてですが順調に動き出しこと、

6)『放射線科学』に解説記事「常温核融合研究の現状」を書いたこと、

をお知らせします。DOENERI計画にG. Mileyの「低エネルギー核変換」が採用されたニュースがありますが、詳細は次号にまわします。アメリカはやはりプラグマテイズムの国です。

 

1)表面層での核反応が常温核融合の諸事象を引き起こす原因である、というのが、TNCFモデルの結論ですが、表面層での核反応の微視的理論は未だ解明が始まったばかりです。News No.3の(1)で述べた論文の内容をより直接にCFPCold Fusion Phenomenon)に適用した次の論文を書き、IJHEに投稿しました。

Hideo KOZIMA and Kunihito ARAI”Local Coherence, Condensation and Nuclear Reaction of Neutrons at Crystal Boundary of Metal Hydrides and Deuterides”

事象の再現性、TNCFモデルのパラメータn_nの値の幅についての誤解が後を断たないので、この論文では常温核融合現象CFPの起こる条件が微視的過程の確率性にあることを強調し、再現性とn_nの値の幅(10^8 10^12 cm^-3)が密接に関係したもので、表面層での中性子滴の形成条件によって左右されることを論じました。

 

2) News No.2の(1)で紹介した第三論文が、IJHEに掲載予定で受理されました。

H. Kozima and K. Arai, “Localized Nuclear Transmutation in PdHx Observed by Bockris et al. Revealed a Characteristic of CF Phenomenon

 

3次の論文の校正をして返送しました。No.2に予告がでたそうで、10月に出るようです。

H.    Kozima, K. Arai, M. Fujii, H. Kudoh, K. Yoshimoto and K. Kaki, "Nuclear Reactions in Surface Layers of Deuterated Solids" Fusion Technol. 36, No.3 (1999)

 紙面で8ページの大論文で、表面層で起こることが実験的に明かにされたNTHe発生などのデータをTNCFモデルで見事に説明したものです。既に拙著で述べたことをより詳しく説明した内容になっていますが、本よりは読む人が多いでしょうから、現象論的アプロ−チの有効性が多くの人に理解されて、CFPの研究が一層進展する事が期待できます。

(共著者の方々へ、別刷が来たら送ります。所属の組織名と所在地を嘉規さん宛お知らせください。E-mail spkkaki@ipc.shizuoka.ac.jp

 

4) News No.3の(1)で紹介したFusion Technol.への投稿論文

 H. Kozima, “Neutron Drop; Condensation of Neutrons in Metal Hydrides and Deuterides

が掲載予定で受理されました。この論文では、自由空間でのExotic Nucleiの存在を手がかりに、TNCFモデルで明かになった捕獲中性子の存在とその境界面(表面層)での局所的コヒーレンス(上記(3)の論文で論じた)によって表面層に中性子滴ができる可能性を論じ、CF現象と結びつけることを試みました。

 Refereeとのやり取りの中で、Hora達が陽子バンドを使って核融合が起こる可能性があると論じている事を知りました。これは僕が何度も論じているように、波動性と粒子性を取り違えた誤りを犯していると思います。Chubb達の間違いを思い出させる考え方です。つまり、2個の粒子が核反応を起こすときは、位置が高精度で決まる、粒子性が現れる場合で、従ってクーロン斥力がそれらの粒子の接近を妨げることになるわけです。波動性が現れるバンド形成のときには、位置は不確定になって運動量(結晶の場合kベクトル)で状態が記述されます。朝永さんの「光子の裁判」を読んでいる日本人には考えられない、初等的なミスを平気で犯す研究者が後を断たないのには驚きます。

 

5)RCCNT7への参加と発表論文

モスクワのPeoples’ Friendship University of Russia Prof. N. Samsonenkoからe-mail がきて、visaの書類は心配ないから航空券を買って準備するようにとのことでした。送金も無事に完了したようですが、$800送金したのに、$785しか入金してないらしいのは、ロシア風なのかと首を傾げてしまいます。航空券の手配も済んだので、無事に会議に参加し、ロシアの研究成果を知り、TNCFモデルの宣伝をしてくることができるでしょう。RCCNT(Sept.26-Oct.3, 1999, Sochi, Russia)では、今までの研究成果を総合して、次の論文を発表します。

H.    Kozima, "Thermal Neutrons and Hydrogen Isotopes in Solids responsible to the Cold Fusion Phenomenon"

 

)実業公報社から出ている月刊誌『放射線科学』からの依頼で、「常温核融合研究の現状」と題した解説記事を書いて投稿しました。2,3ヶ月先には活字になるでしょう。最新のデータを基に、TNCFモデルの立場から現象を紹介し、応用の可能性を述べました。発行部数が割りに多い雑誌のようですから、どこかで読むことが出来るでしょう。アメリカ、ロシア、イタリアに較べて日本の研究体制が遅れていることは前から気になっていましたが、化学系の雑誌が関心を寄せてくれているのは心強いことです。