CFRL News 2 (1999.7.10)

                常温核融合研究所      小島英夫

 

   CFRL News (Cold Fusion Research Laboratory News) No.2をお届します。

   第2号には、

1)     J.O’M. Bockrisのデータ解析の結果、

2)     ICCF8の日程、

3)     Neutron Clusterの可能性、

4)     L.C. Caseの実験の話

などを取り上げました。

 

1)Bockrisのデータは素晴らしい。  

  J.O’M. Bockrisが拙著Discovery of the Cold Fusion Phenomenon を読んで彼のデータをチャンと引用してくれと注文をつけてきたことは、どこかで記したと思います。

その論文の主なものは、次の3編です。

N.J.C. Packham, K.L. Wolf, J.C. Wass, R.C. Kainthla and J.O'M. Bockris, "Production of Tritium from D_{2}O Electrolysis at a Palladium Cathode", J. Electroanal. Chem. 270, 451 (1989).

C-C. Chien, D. Hodko, Z. Minevski and J. O'M. Bockris,  "On the Electrode Producing Massive Quantities of Tritium and Helium", J. Electroanal. Chem.  338, 189 (1992).

J.O'M. Bockris and Z. Minevski, "Two Zones of "Impurities" Observed after Prolonged Electrolysis of Deuterium on Palladium", Infinite Energy  5 & 6, 67 (1995-96).

これらの論文を、太田君と山本さん(ヤマハ発動機)の協力で読むことができました。

第一論文は、世界で最初にトリチウムの精密測定をしたものでした。彼が拙著に引用していないのを不満に思うのも尤もです。早速解析し、Bockrisの助言によってInternational Journal of Hydrogen Energy誌に投稿しました。受領の連絡は未だきていません。 n_n3.6 x 10^7 cm^-3となります。

第二論文は、核反応生成物であるトリチウムとヘリウム4を同時に測定した、世界で最初のものです。ヘリウム3が存在しないことも明らかにしています。Morrey達のデータと同じで、ヘリウム4は陰極Pdの表面層に存在し、その量が発生量の数%とすると、トリチウムの量と合います。これはMorrey達の場合に3%とすると熱のデータと合ったことを考えると、辻褄があいます。n_nの値は1.8 x 10^6 cm^-3 です。

第三論文は、Pd陰極表面層でMiley達が後に測定したような種々の元素を測定したものです。NT_Fとしては、世界で最初に局在を示したデータです。Feだけを取り上げて解析した結果は、n_n = 1.5 x 10^11 cm^-3となります。

これらの計算には、新井君の協力を得ました。

 

2)ICCF8の場所と日程が確定。

Franco ScaramuzziChairmanとして開催されるICCF8の招待状が郵送されてきました。

8th International Conference on Cold Fusion, May 21-26, 2000, Villa Marigola, Lerici (La Spezia), ITALY

I am pleased to inform you that in May 2000 the “8th International Conference on Cold Fusion” (ICCF8) will take place in Italy, at Lerici, near La Spezia, in a beautiful spot on the Tirrenian Sea, and will be organized by the “Ente per le Nuove Tecnologie, l’Energia e l’Ambiente” (ENEA).

イタリアでは、CFが市民権を得ていることが、次の文章からも分かります。

In this Conference an effort is made to improve communications between the Cold Fusion community and the scientific world at large. This is the significance of the important sponsorships that have been secured to it: the Italian Consiglio Nazionale delle Ricerche (CRN), the Italian Istituto Nazionale de Fisica Nucleare (INFN), the Societa Italiana di Fisica (SIF).

まだ1年近く先の話ですが、ここで言われている物理学の一分科としてのCf現象は、我々が言ってきた当たり前のことで、TNCFモデルの発展も着々と進んでおり、いくつかの研究を発表できると思っています。

 

3)Exotic NucleiNeutron Cluster in Solids

薮内さんが教えてくれた本(中村誠太郎編「大学院原子核物理」講談社)で、Exotic Nucleiの勉強をしました。^10He, ^11Li, ^32Naなど、異常に中性子数の多い原子核が散乱実験で見つかったのがここ10年のことのようです。

TNCFモデルではこれまで中性子の相互作用を考えないできましたが、表面層でlocal coherenceが存在する状況では、中性子間の相互作用が当然効いてくるはずです。FisherMiley達のデータの解析に使ったPolyneutronが正しく表面層でのneutron clusterではないかと思います。TNCFモデルの発展が核物理とこのような形で交わることになったのは、喜ばしいことです。

 

4) Fusion Technol.に昨年投稿した論文が、今秋のVol.33, No.3に掲載される予定です。6名連名の論文です。

 

5) L.C. Caseのデータその後。

前号で紹介したMurrayが、その後Caseのデータはヘリウムの表面吸着で説明できると言っています。Caseの研究はICCF7にも発表があり、Proc.にも載っていて、私のICCF’7 ReportEEに投稿したが未だ出ない)でもRemarkable Result と紹介しました。しかし良く考えると、d-d反応で^4Heができるはずはないので、他のファクターが分からないと解析のしようもなく、Proc.の文章だけからは詳細が不明です。Murrayの反論の方が今のところ正しいようです                  (以上)