ポートランドだより (17                             2007. 5. 5

 3ヶ月の予定でポートランドへ来て、余すところ10日ばかりとなり、帰国の準備に気もそぞろという感じになってきました。

 5月に入っても、天気は相変わらずパッとせず、晴れ間は大分増えましたが、気温は余り上がりません。2日には朝から曇り空と思っていたら、昼ごろには雷に雹という天気でしたが、それも長続きせず、1時間後には薄日の射すほどで、大方曇り、時々晴れ、たまに雨という感じは、解消していません。これで夏になると干天続きで、森林火災が話題の大きな部分を占めるのですから、面白いところです。

 2月から咲いていた椿は、流石に容色衰えて、殆ど見る影も無く、4月中旬まで咲き誇っていた一重と八重の桜も姿を消して、今はハナミズキとシャクナゲの全盛期です。早いのは4月の初めに咲き始めていたシャクナゲですが、次々に色の違う種類が咲き始めました。最初は白にピンクの筋の入った清楚な花で、ピンクの濃いもの、紫、黄色、ピンクの薄いもの、白一色などと色はさまざまです。大きい株は、34メートルに達するものがあちこちで花を開いている様は、可憐という感じではなく、大柄の西洋美人という様子。シャクナゲに対して持っていたイメージがかなり変わったようです。もっとも、奥秩父の十文字峠で見たアズマシャクナゲも2メートルくらいはあったので、条件がよければ大きくなる種類なのでしょう。今咲いているのは、赤、白、紫、ピンクなどです。

 ハナミズキの美しいのを認識したのは、今回の滞在の一つの収穫でした。3年前には、大学構内と言っても良いような、大学の建物と混在した幅80メートルくらいのパークアベニューに面したアパートに住んでいました。楡の大木が立ち並ぶこのアベニューという名の細長い公園では、スズランやエンレイソウなどの草花、チョッとした開けた空間に薔薇などが咲く程度で、高木の花木は目に付きませんでした。桜も少し離れた川岸の日本公園で眺めるのが最も美しい光景だったわけです。

 今回は、バスで20分の郊外の住宅の一室を借りたので、ほとんど毎日がバスでの通勤でした。土曜日や日曜日に家にいると、3食を自炊することになるので、週に7日はバスで大学に出ていたわけです。途中の住宅街の広い道路の両側には、かなりの大木が育っていて、その中にはクルミ、プラタナス、西洋カエデなどがあり、住宅の広い庭には、花木が多く植えられています。その殆どがハナミズキとシャクナゲとツバキ、低木ではツツジとサツキ(その区別も良く分かりませんが)に加えて、西洋種の名前の分からないものです。今、ハナミズキの最盛期で、ピンクと白の花が、美しく住宅地を彩っています。その二、三の例をホームページに掲載します。

http://web.pdx.edu/~pdx00210/Miscllnsj/plddayori/plddayori.html 

 51日には、メーデーの行進がありました。昨年、かなりの混乱があったとかで、警戒態勢は厳重でした。昨年は、「不法移民」(メキシコなど中米からのビザ不保持労働者)の取締りを厳重にしようという共和党議員の議案が議会に提出されたのをキッカケに、従来の労働者中心の行進にヒスパニック系住民が多数参加し、一部が暴徒化して多数の逮捕者を出したのだと、新聞の解説でした。今年は、その轍を踏まないように配慮がなされ、参加者も昨年の半分の3000人、逮捕者は二人だけだったそうです。それにしても、イラクでは3000人以上のアメリカ人が「戦死」し、その百倍くらいのイラク人が死んでいるのに、数百万人の「不法移民」の労働力を吸収して繁栄しているアメリカという国は、一つの不思議ではありませんか。(そのような構図の一極をもった現代世界の不思議、と言った方が想像力を掻き立てる役に立つかもしれませんが)

 

 こういう風に書いていると、物理をやっているのか?と疑問に思う向きもあるかもしれません。そういう方は、ホームページにCFRLニュースを掲示しておりますので、物理に関してはそちらをご覧ください。

http://web.pdx.edu/~pdx00210/ 

常温核融合現象が多体系でのカオスや自己組織形成などと同じ系統の現象であるという立場から、現象論的アプローチを行い、三つの規則性(法則と呼びたいのですが)を見出したというのが、この間の最大の成果だと自負しています。第三の法則は今回明らかにしたものです。

 その3法則を簡単に説明しますと、次のようになります。

<逆べき法則>過剰熱の発生頻度を過剰熱の大きさの関数としてプロットすると、指数関数的になり、両対数グラフに描くと、ほぼ直線になって勾配は−1から−2の間ある。これは1/fゆらぎと同じ系統の多体効果で、地震のエネルギーと頻度の関係が満たす関係式でもあります。この場合、指数は−1.77になることが経験的にわかっているそうです。

<安定性法則>核変換で生ずる原子核は、その安定性が高いものほど多く生ずるという法則。宇宙の元素存在比と比較して、常温核融合現象で生ずる元素が存在比と対応することを見出したものです。

<カオス性法則>仮にこう名づけておきますが、常温核融合現象の起こり方が、カオスの起こり方に似ていることを示したものです。カオスと言っても多様なので、ここでの比較はロジステック差分方程式

       xn+1 = λxn(1 – xn ) (0 < x0 < 1).

の解の振る舞いと比較し、その周期倍増とカオスの出現が常温核融合現象でも見られることを示しました。

 この常温核融合現象の三法則によって、非線形相互作用する要素からなり、開いた、非平衡、不安定系で起こる常温核融合現象が、多体効果とカオス的振る舞いを特徴にした現象であり、定性的(確率的)再現性しか期待できないことを示したつもりです。

 今まで、再現性がないから、というのが一つの理由で常温核融合現象が白い目で見られてきた事実は、何の根拠もなかったことが、証明されたと言って良いでしょう。

もう一つの、常温の固体中で核反応が起こるはずは無い、という硬い思考枠の障壁の方は、中性子物理の新展開によって解消できるはずなのですが、こちらは核物理と固体物理の発展とも関連しており、もう少し時間がかかりそうです。

これらの物理のより詳しい内容は、CFRLニュースやJ. New EnergyおよびProc. ICCF13に出る予定の論文に盛り込まれています。

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