ポートランドだより (16                             2007. 4. 10

 

  2003年の8月に、3年間のPortland 滞在を終えて帰国してから、3年半の日本滞在の後に、再びPortlandへ戻ってきました。

  この間のアメリカの変化は、外から想像したのとは大違いでした。イラク戦争の陰影は感じられますが、それはこの国の活動の一部でしかないということでしょう。この国の大きさを実感させられました。

  ポートランド市内では、大規模なインフラ改造が進んでいて、市内の区画を選んで、上下水道、電気、ガスの配管の再配置が進んでいます。道路が閉鎖されてしまうので、バス路線は完全に置き換えられています。今まで上り、下りの路線が走るメイン道路だった、五番と六番の通り(5th and 6th Avenues)が現在、閉鎖されているので、すべてのバスが三番と四番の通りに移っていて、最初はちょっと面食らいました。高層建築が次々に建てられていて、大学構内から見た、と言うよりキャンパスから見たと言った方がアメリカ的ですが、風景は一変していました。何で、今、ポートランド市がこんなに活況を呈しているのか不思議ですが、アメリカ経済全体が戦争景気なのかもしれませんね。インテルの工場がオレゴン州に移ってきて以来の好況だという面もあるようですが、もう少しグローバルな原因によるのではないか、というのが僕の感じです。

  3月中旬まで、この辺の雨季のおかげで、毎日が雨、雨、雨でしたが、最近は晴れ間も時々見られます。6日などは22年ぶりの記録的な暑さになり、25度まで気温が上がりました。ところが、7日にはまた元に戻って、雨ときどき晴れの涼しい気候で、それ以来曇り空から雨のパラつく日が続いています。天気の不規則なのにかかわらず、植物は季節にしたがって咲き誇っていて、2月中旬には椿が満開で、椿は今でも咲き続けています。もう少し季節を感じさせる花では、2月下旬の桜から始まって、コブシ、皐月、木蓮、早咲きの石楠花、八重桜、ハナミズキと咲き続けています。これから石楠花のいろいろな種類が楽しめ、5月になれば薔薇が咲き始めるでしょう。6月の薔薇祭りは楽しめない日程ですが、この地が気候に恵まれていることを実感します。

  インフラの整備でバス路線が変わってしまったことに関連して、インフラの充実振りを伺わせることの一つに、無線化された市内のインターネット接続が無料で利用できることがあります。大学内はさらに便利になって、無線化はもちろんですが、コンピュータのトラブルの相談に乗ってくれるヘルプデスクに加え、計算に関する問題の相談に乗ってくれる部署が新たに設けられていました。Engineering and Computer Engineering Department(ECE)の新しい大きなビルができ、そこにTeaching Assistantがいて、いろいろな問題の解決に協力してくれます。Latexの使用法や数式処理の問題でお世話になって、ここへ来たメリットを実感しました。

   専門の常温核融合現象(CFP)の研究では、共同研究者のJohn Dashが二人の中国人研究者を雇って実験を続けており、生のデータを前にして一層研究意欲を刺激されています。この調子だと、帰国までに論文が2,3書けそうで、怠け者の本性から、刺激のある生活でないと生きていられないことを実証した渡米になりそうです。

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