ポートランドだより (9)                             2003. 1. 20

迎春   20031

 

時間の移り変わりが農業社会だった頃とは全く変わってしまっても、暦の上での新年には、大晦日の除夜の鐘や広場に集まってのカウントダウンなどを慈しむだけの印象を心に与える意味があるようです。

3年目になって、初めてパイオニア広場Pioneer Courthouse Squareの大晦日の夜を味わいに行ってみました。12月半ばから1月初旬まで3週間続いた「雨時々曇り」の天候で、31日の夜も降ったり止んだりでした。広場では仮設舞台でバンド演奏が続いていて、広場の周りの道路は検問所を通らないと出入りできなくなっています。ボデイチェックで腋の下に触られて奇声をあげて飛び上がった後、人で埋まった広場に近づき、バンド演奏を覗いてみました。雨がまた降り出し、音楽は大音量の現代アメリカ音楽なので、2時間も待っている気にはなれず、早々に引き返してきてテレビで各地(と言っても2個所)の年末風景を楽しみました。

アメリカのテレビはそれほど多くの都市の風景を見せてくれるわけではありません。その点、日本の「行く年来る年」番組とは大違いです。日本が一つの国として新年を迎える感じだとすると、アメリカでは各都市ごとに迎えるという感じでしょうか。

時差の関係(3時間の差)でとっくに新年になっているはずのニューヨークのカウントダウン風景が、オレゴンを含む太平洋岸時間の新年に合わせて放映されていました。大きな光の球が下りてきて0時に破裂して光の年号2003になるのは、例年同じ趣向のようです。シアトルの花火を主体にしたカウントダウン風景も美しいものです。パリやロンドンなどでも似たような光景を見たことがありますから、西欧諸国ではほぼ同じような新年の迎え方をするようです。元旦は休日ですが、2日からは平常勤務になるのも、クリスマスからの連休の最後が元旦という感じなのでしょう。

1月20日(第三月曜日)はキング記念日Martin Luther King Jr. Day (In 1983 the third Monday in January was designated a federal legal holiday in honor of Martin Luther King, Jr.'s birthday; his Atlanta birthplace and grave site have been made into a national historic site.) で大学も休日でした。この記念日を期して、18日の土曜日には、全国で反戦集会が開かれ、ポートランドでも公園通りPark Avenueの一角に2万人以上が集まって、イラク攻撃に反対するアピールを唱和していました。

冬枯れのポートランドですが、幾つかの花が彩りを添え始めました。ツバキが咲き始めました。西日の当たる建物の脇に、公園通りPark Avenueにそって植えられたツバキの中の2本と朝日の当たる所の1本です。西日の位置のは3メートル位の大株で、赤い八重と紅白の絞りの八重の花が開き始め、椿の字のとおり、春を告げる花の面目を示しています。朝日の当たる位置のは4メートル以上の大木で、乙女椿の淡いピンクです。どれも株の最も高い所から咲き始めているのは、黄葉が同じ位置から始まったのと対応しているのでしょう。理学部棟横の皐月の二株が、紅の花を数個ずつ咲かせ続けています。寒い冬のないこの地で、季節感を失ったのかなと思います。不思議な感じがしますが、専門家には簡単に説明できることなのでしょうか。

学内便で届けられた大学(Office of President)からの手紙が、アメリカの多人種社会を示しています。コネクションConnectionsという交流会の案内ですが、最初に理解できなかったのは、faculty and staff of colorという表現です。どうやら、「白人以外の教職員」ということらしいと想像して、アメリカ人に聞くと、そうだろう、という意見でした。白人はwhiteあるいはコーカサス系Caucasianと言い、それ以外の人間を表す言葉として、こういう言い方をするようですが、ピンと来ない語感です。

A few years ago we began to have regular meetings called CONNECTIONS. These were designated times when faculty and staff of color would gather (with some good hors d'oeuvres and music) to comfortably interact with other faculty and staff of color.”

アメリカ人と親しくなって、相手の人種的系統が話題になると、日本人との違いに驚かされます。日本人だと、あまりはっきりはしませんが、縄文系(南島・アイヌ系?)と弥生系(大陸・朝鮮系?)の混じり具合が推定される程度ではないでしょうか。アメリカ人の場合だと、Aさんはイングランドに1/4原住アメリカ人が混じっているとか、Bさんはスコットランド+ドイツ+ユダヤ系だとか、2、3代前までの出身地別の混血状態を知っていて、場合によってはその多様性を誇っている感じさえあります。

アメリカの国勢調査は、形式が一定していないらしく、2000年度の調査の人種に関する部分が、上のConnectionsとも関連して、特徴的です。人口が2億8140万人であるのは問題ないとして、次の人種別内訳の統計は、自己申告によるとのことです。

人種としては、White(1億9970万人), Black or African American(3千万), American Indian and Alaska Native(2百万), Asian(690万), Native Hawaiian and other Pacific Islander(40万), Some other race(980万)が並んでいます。

そして1990年にはなかった、「2あるいはそれ以上の混血」Two or more racesという欄ができ、7百万人近くがそれを選んでいます。

注釈に、1990年と2000年の調査項目が違うこと、したがって単純な比較はできないと断ってあります。http://www.census.gov/statab/www/poppart.html

原住アメリカ人の意識変革が進んで、積極的に自分を原住アメリカ人およびその混血と申告する人が増えているという説明も、どこかで聞いたことがあります。

先日、中国系アメリカ人の家庭の新年会に招かれ、彼らのダンス仲間数人と談笑する機会がありました。冗談に「USAUnited States of Americaの略語ではなく、Ununited States of Americaの略語だろう」と言ったのですが、この国の州権はそれほど強いことを、いろんな機会に味わいます。Ununitedという言葉は大きな辞書には出ていることを後で知りました。冷や汗ものの冗談でした。)