ポートランドだより (3                             2002. 8. 10

涼しいポートランドから暑中見舞いをお送りします。

7月下旬に、合わせて6、7日の真夏日を経験しましたが、8月に入ってから気温が下がり、この45日は半袖では肌寒いくらいの日が続いています。もう一度くらいは真夏になるのではないかと思いますが、去年の経験ですとこのまま秋になってしまう可能性もありそうです。暖房のない今の季節は、冬より寒いベッドで寝ています。

花は夏枯れで、眼につくのは咲き残りのバラとアジサイくらいですが、面白いイチゴをグランド横の土の斜面で見つけました。今がイチゴ類berriesの最盛期で、毎週土曜の午前中開かれる、アパートの前のPark Avenueの農場市Farmer’s Marketでは、普通のイチゴStrawberry、目に良いというブルーベリーBlueberry、小さな種が少し硬くて食べるときに気にならないでもないラズベリーRaspberry(日本の木苺に最も近い感じ),ラズベリーを真っ黒にしたようなブラックベリーBlackberryなどが並んでいます。1ポンド2ドルくらいでしょうか。近郊の農園では、イチゴ狩りが盛んで、それらの木の植わった農場で、食べながら摘んで収穫したイチゴはこの1/4くらいの値段で買ってこられます。

グランド横の斜面で見つけたイチゴは、色がまさにイクラそっくりの少し赤みがかった黄色で、形はラズベリーに似た、5cm位のつる性小潅木に生っているものでした。生物教室の学生に聞き、調べてもらった結果、俗名サーモンベリーSalmonberry、学名Rubis Pentalovisで、食べられる種類と言うことが分かりました。ベリーといっても形はさまざまで、プルーベリーとラズベリーでは形が全く違うことから、ベリーとは何か?と疑問に思ったものです。辞典によると、英語では、食べられる果実をベリーberryというようで、本来のベリーはバナナのような実の着き方をした果樹のようですから、俗名では何がベリーかを定義するのは難しいようです。サーモンベリーですが、味はいけるのですが、小さな種がラズベリーの種なみにかたく、その数は多く、誰も採らない理由は観賞用に残してあったということだけではなさそうでした。

プラスチック容器に一杯、イクラの山盛りのように摘んできてジャムを作りましたが、やはり気になるのは硬い種でした。

8月3日の土曜日に、オレゴン仏教寺院The Oregon Buddhist TempleOBT)で盆踊り大会があり、Mさんの車で連れて行ってもらいました。このお寺はアパートから6、7キロのところにあり、バスの便がちょっと悪いので行きにくいところです。毎年、この時期に盆踊り大会を開いていて、今年も6時半から30分の太鼓演奏、4-50分の盆踊り2回で、終了は、薄暗くなりかけた9時くらいでした。寺院の横の広場の中央に低いやぐらを作り、それを中心に盆踊りの環が作られます。参加者は3、4百人で、日本の民謡にあわせて手振り足振り踊るさまは、見ているだけでも楽しいものでした。Mさんの5歳になる息子のジュンJunが面白がって踊り通したのにはびっくりでした。

この寺院OBTは創立100年を迎える古刹(?)ですが、建物は日本風の寺院建築ではなく、外見はお寺らしくありません。中に入ってしまえば日本のお寺とかわりません。最初の日本人移民が1880年にオレゴンに入ったそうですから、寺院創設はその20年後になります。その間にどの位の日本人がこの地に住みついたのでしょうか。

日本人的には、どの宗派かが気になるところですが、置かれたパンフレットの文章にナムアミダブツが含まれていて、夏期セミナーの分科のテーマにReflections on the Tannisho(歎異抄回想)とありますから、浄土真宗なのでしょう。しかし、創立100周年記念講演会シリーズのテーマがBuddhism in the American Grain(アメリカの風土における仏教)で、講師が曹洞宗のK. Carlson師と浄土真宗のJ.G. Gibbs師と書かれていることから、宗派に囚われない仏教運動を目指しているように思えます。18世紀啓蒙期の思想家レッシングG.E. Lessingの劇誌「賢者ナータン」を思い出します。地球規模での思想的な混迷期にある現代は、理性と寛容に基礎をおいて社会を作ろうという考え方が、18世紀に劣らず必要とされているのではないでしょうか。

日本と韓国でフィーバーを起こしたFIFAワールドカップ2002ですが、二ヶ月ほど前にケーブルテレビの契約を月40ドル出して60チャンネル見られるものに格上げしたので、ほとんどの試合を見ることができました。もっとも、試合時間が深夜から早朝なので、録画したりして苦労しました。結果が気になってニュースで確かめてしまうので、臨場感の失われることが多かったのが、少々残念ではありました。

自分でもサッカーをする立場から見ると、サッカーのルールは少し時代遅れで、それが試合の質を低めているように感じます。アメリカでサッカー人気が低い理由がいろいろ言われていますが、一つの理由は反則が厳密にチェックされないことにありそうです。ゲームの規則に敏感なアメリカ人が好きなスポーツは、とれも詳細な規則を審判が厳密に判定しながらゲームが進行します。もっとも最近、アメリカ大企業の不法行為がいくつも露呈しているのは、規則破りが横行していることを示していて、悪い奴はどこにでもいる証拠です。一般的には、アメリカ人は規則破りを嫌うと言えるでしょう。最近9.11とPearl Harborがよく対句で出てくるのも、反則嫌いを表しています。ですから、サッカー選手の目に余る反則は、見ていて快くないのです。ユニフォームを掴んで行動を妨害し、背後から滑走タックルして相手を倒すのを見ているのは不快ですし、それに加えてレフェリーが不公平なジャッジをするのでは、興味が失われてしまいます。

  レフェリーを二人にして、グランドの半分ずつを分担するという、近いうちに試行するという案も一つの改善策でしょう。反則にたいする罰則を強化する意味で「フリーキックの位置に関係なく、そことゴール両端を結ぶ線内には人壁を作らせない」という一石二鳥案を考えました。得点は確実に増えるでしょうし、フリーキックを取られるような反則は激減するはずで、怪我で選手生命を危うくされるようなことも減るでしょう。

  ブラジルの優勝は、妥当な結果ではないでしょうか。ストイコヴィッチも言うように、見ていて楽しいサッカーをしてくれたのはブラジルだけでした。おめでとうブラジル。