30. 退官教官からの「学生に一言」

入学金1万円と前期分授業料1万円を貰って上京し、東京理科大学の2部(夜間部)に入学したのは、約半世紀前の 1954年でした。

現在日本武道館のある千代田区代官町に建っていた、元近衛連隊兵舎の一角を占める東京学生会館(寮費 130円、一食 20〜 30円)に入寮できて、アルバイト(時給 25円)と奨学金(月 2,000円)で生活費と授業料を賄うことができました。そこは「暮らしは低く、思いは高く」を地でゆく、夢を失わない多くの友との邂逅に満ちていました。

決して短くはない半世紀は、朝鮮戦争、三井三池炭坑争議、安保闘争、ベトナム戦争、大学紛争と全共闘運動、ソ連邦崩壊、バブル景気破裂、と歴史に残る事件に彩られていますが、その中に人間的触れ合いが脈打っている個人史でした。

1965年から静大で教育・研究に携わり、個性豊かな同僚や学生と送れた人生の幸せを感謝しています。研究面でも独創性のある業績が挙げられたと自負できるのは、優れた学生諸君との協力の成果でした。飢餓発展の時代から飽食閉塞の時代に変っても、人間の本質は変りませんから、年齢も心も若々しい君達が時代を切り開いて行くことを信じています。

(『静大だより』115, 11, 1999)