6. わが部 わがサークル ― 合気道部

  合気道にずぶの素人の私が部長を引き受けてから三年になる。それを契機に道場へ出るようになったが、膝や肘に青痣をつくり乍ら稽古をするうちにその魅力にとりつかれてしまった。先ず合気道とは何かを師範の著書から引用させていただいて説明しよう。

「合気道は技法が合理的であるので、護身術としては優れているし、臍下丹田から出す呼吸に合わせる、柔らかく伸び伸びした練習は心身を爽快にする健康法として愛好されている」が、本来「合気道は闘争の法であって、その練習においては一に武術としての厳しさがなければならない所であり、武術の練習をしているうちに心身の健康も得られると考えるべきである」(鍋田開智著『再び守破離』より)。

合気道を習う者の忘れてはならない心得である。

部の指導は、合気道光輪洞清水支部の鍋田開智師範と日本拳法空手道七段の中田弘師範(本学事務官)にお願いしている。現在の部員数は65名で、男子の方がやや多い。日常的な稽古は、各自の自主的なものの他に、月、木、土の午後、約 2 時間ずつ体育館の道場において定期練習が行われる。強化練習は、夏期強化合宿(7日)を学外で、春期および冬期強化練習(各5日)を学内で行う。

日本の伝統文化に対する外国での関心の高まりに対応して、日本文化に肌で接したいと願う留学生も増えている。わが部にもこれまでにJ・ロウハウス(U・S・A)、P・ウィスィット(タイ)、K・M・チー(ビルマ)の三君が入部し、一年未満ではあったが稽古に励んでいた。現在、J・ピーターソン嬢(U・S・A)が在部し、慣れない物腰ではあるが基本動作の習得に余念がない。

両師範のご指導により、部の伝統には日本文化の精華が根付いているように思う。在学中の短年月で武道を体得し尽くせるものではないが、伝統文化を身につけた国際人に育つ基盤の形成は確実になされている。

 (『静大だより』 80, 12,  「顧問教官のわが部 わがサークル」, 1985)